どうする、仮想通貨の税金!?投資家、税理士に求められる仮想通貨税務

どうする、仮想通貨の税金!?投資家、税理士に求められる仮想通貨税務

エアリアル・パートナーズの代表取締役 沼澤健人が、仮想通貨業界のキーパーソンと業界の未来について語る対談企画第1弾。

今回のキーパーソンは、JCTA(ジャクタ/一般社団法人 日本仮想通貨税務協会)理事長の岡田佳祐氏。難解なイメージが先行する仮想通貨の確定申告や税務処理にまつわる現状など、わかりやすく解説してもらいました。

仮想通貨の確定申告を考えている投資家・税理士の方は必見です。

仮想通貨税務の課題点、それに関する活動について

−−まず、仮想通貨投資の現状について教えてください。

エアリアル・パートナーズの代表取締役沼澤健人

沼澤

投資家の方、税務関連に携わる我々で抱える課題が異なりますが、2017年から確定申告が必要な投資家が急速に増えています。ビットコインを中心とした仮想通貨の高騰で注目されたことが要因です。これにより、多くの方が、申告基準の20万円を超える利益を得たことが挙げられます。その後も、仮想通貨の高騰は夏季や年末へと続き、申告が必要な方が右肩上がりとなりました。

本年度については年始以降右肩下がりの相場が続いているため確定申告をする必要がないと考えている投資家の方は多いのですが、昨年仮想通貨の取得価格の計算方法として総平均法を採用している方を中心に、昨年以前の所得を本年度以降に繰越している方は、気づかずして確定申告が必要になっているケースも多くあります。

これに反して、税務については、すべての税理士が仮想通貨にまつわる知識を持っているわけではありません。それゆえ、投資家と税理士のマッチングを事業としている当社は、JCTAと協力し、税務環境の整備を進めています。

 

−−JCTA(日本仮想通貨税務協会)の活動内容を教えてください。

JCTA(ジャクタ/一般社団法人 日本仮想通貨税務協会)理事長の岡田佳祐氏

岡田氏

沼澤氏の話にありましたが、申告ニーズが高まっている一方、対応できる税理士の数は限られています。今後を見据えれば、さらなるギャップの拡大も想定されます。そこで、当協会では、投資家の方が「安心して投資を行える税務環境の創出」をテーマに活動しています。具体的には、セミナーの開催や教本の作成・提供により、仮想通貨に対応できる税理士の育成を行っています。また、よりよい環境が醸成されるよう、課題を洗いだし、税制改正などの提案も国税庁に行いたいと考えています。

 

現状の課題から考える

−−仮想通貨の税務の難しさは、どのような点にありますか?

沼澤

一番は複数の仮想通貨取引所やウォレット等をまたいで「通貨ごとの損益」を計算しなければいけないことですよね。投資家、税理士ともに、最も労力を強いられる部分だと把握しています。

 

岡田氏

そうですね。簡単に言うと、「まとめられない」です。損益計算は取引所ではなく、仮想通貨ごとの単価計算が必要です。

一方、従来のFXや株式とは異なり、仮想通貨投資は、一種類の通貨でも複数の取引所を利用することが一般的です。国内外で多数の取引所を利用している方もめずらしくなく、非常に計算が複雑になる。また、現税制では、通貨同士の交換でも、含み益ではなく実現益として扱われる(利益として課税される)ようになっていて、取引履歴をすべて収集しなければいけないことも大きな労力を強いられます。

 

沼澤

さらに、「取引形態の多さ」も…

 

岡田氏

たしかに。

 

沼澤

ひとつの仮想通貨が分裂してあたらしい通貨が流通する「ハードフォーク」や、価値が定まっていないトークンが無料配布される「エアドロップ」での取引。さらに、仮想通貨流通の“働き手”として報酬を得る「マイニング」など、多種多様な取引形態があります。今度も種類は増えていくのではないでしょうか。

当社は、投資家と税理士のマッチングに加え、税額を計算できる自動化ツールをご提供しているのですが、さまざまな形態やすべての取引所に対応できるツールを提供することは、取引形態の進化のスピードを考えるととても挑戦的な目標だと言えると思います。

 

岡田氏

現状の税務処理からみても、取引形態の多様さは大きな課題です。

ひとつ例を挙げれば、「ボロウィング」。FXでいうところの空売りのイメージに近いのですが、従来の税務処理では想定されない取引で、その計算も非常に複雑です。きわめて高度なテクニックが必要になります。

ですので、密な連携サービス、包括的な取り組みで一つひとつ課題をクリアしていくことが重要です。

 

−−課題に対するそれぞれの取り組みを教えてください。

岡田氏

ボロウィング然り、仮想通貨の税務で税理士ごとに見解の違いが発生してしまっては意味がありません。当協会としては、会員税理士の育成ならびに、税務のデファクトスタンダードの確立にも注力しています。これについては、すでに実績もあります。

2017年12月1日に国税庁より「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」が公表され、税務計算の方法が発表されました。しかし、実際の現場では、当該の内容だけでは処理できない取引が多々あり、困惑される税理士の先生も多かったです。そこで、迅速に情報収集を行い、さまざまな取引における指針を発表しました。内容は暫定的であったものの、会員だけでなく、さまざまな税理士の先生から「とても参考になった」と、うれしい評価を得ることができました。

他方で、投資家の方と仮想通貨交換事業者に向けた啓蒙にも注力しています。たとえば日々の取引履歴を、申告に必要なものだと認識している投資家の方は多くありません。各取引所についても取引履歴のフォーマットは一様ではなく、管理していない取引所もあるのが現状です。

「申告には何が必要になるのか?」 「どのような環境があれば投資家がスムーズに申告できるのか?」 など、今後も積極的に情報提供を行っていきます。

 

沼澤

当社の自動化ツールを、あらゆる取引に適応できるツールとして改善させていくにあたり、要所要所で専門家によるプロフェッショナル・ジャッジが欠かせません。ですので、JCTAをはじめとする業界団体や仮想通貨に造詣の深い税理士の先生と今後も密に連携を取り、改善に努めていきます。

また、サービス事業者として、投資家の方の声をダイレクトに聞ける立場であることから、投資家の意見を業界団体と積極的に共有し業界の発展に取り組んでいきます。

 

よりよい投資、税務環境の創出に向かって

よりよい投資、税務環境の創出に向かって

−−投資家、税理士、サービス事業者、団体など業界全体が歩調を合わせた整備。それが仮想通貨投資のよりよい環境を生むのですね。

沼澤

まさにそうです。投資の視点からお話しすると、税制改正への期待感は日に日に高まっています。ただ、「国益に資し、投資家も納得する前向きな改正とは?」 ということに関しては、まだ議論が煮詰まっていません。

そこで当社ができることとしては、“架け橋”になること、です。改正に向けてよりよい検討をしてもらえるよう、日々実際に行なわれている取引の実態を、事例としてJCTAはじめさまざまな業界団体にお伝えしていくことが必要だと考えています。また、改正以前に、現状では、どのように確定申告をすればよいのか、その認知が広く浸透しているとは言えません。

200万人以上の投資家がいると言われる一方で、申告を行いたくても方法がわからず未申告の方も少なくないと聞きます。当社がそういった方々の窓口になり、誰もが確定申告を行える土壌を築いていく。こちらも重要な目標の一つです。

 

−−最後に、投資家、税理士の方々にメッセージをお願いします。

岡田氏

損益計算はもとより、取引にかかった経費の正しい処理の仕方、または申告内容全体で控除可能な事柄の判断など、税理士に確定申告を依頼することで複数のメリットを受けられる事例も多々出てきています。依頼費用としても、メリットを考えれば決して高額ではないので、投資家の皆さまに税理士の先生に申告を依頼頂くことをぜひご検討いただきたいと思いますね。

また、当協会としても、皆さまが申告しやすい環境づくりに邁進しています。たとえば「課税を決済時、法定通貨交換時のみとする」「FX等と同様の申告分離課税にし、かつ損失を将来に繰り延べできるようにする」など、仮想通貨投資の発展に寄与し得る内容のロビー活動を実施中です。

ぜひ、投資と同様に仮想通貨の税についても興味をお持ちいただければ幸いです。

沼澤

多くの税理士の方々に、仮想通貨税務のプロフェッショナルとしてぜひご活躍いただきたいです。
仮想通貨取引の活況とともに、昨今では仮想通貨による資金調達「ICO」の浸透も急速に進み、今、急速に投資家が増えています。それゆえ、造詣が深い会計事務所のみに相談が集中してしまう状況にあります。「未知の分野であるリスク」「税法の整備が十分ではない」など、確かに仮想通貨ならではの難しい面もあるかもしれません。

しかし、仮想通貨投資の発展には皆さまのお力添えが欠かせません。ぜひ、JCTAの活動にもご参加いただき、また当社にもお力添えいただきたいと考えています。

 

JCTA(ジャクタ/一般社団法人 日本仮想通貨税務協会)
JCTAは、納税者及び税理士の方々への仮想通貨の税務処理に関する適切な理解の啓蒙を通して、納税者の方々の保護及び適正な納税慣行の普及を目指し、ひいては仮想通貨の更なる発展・普及を目的としています。
JCTA一般社団法人日本仮想通貨税務協会

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仮想通貨の取引で一定の利益が出た方は確定申告が必要です。申告をしないと申告漏れによるペナルティが課される可能性があります。株式会社Aerial Partners(エアリアル・パートナーズ)では、仮想通貨に精通した税理士による申告までの総合的なサポートサービス『Guardian(ガーディアン)』と、仮想通貨取引の損益計算システム『Gtax(ジータックス)』を提供しています。
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