仮想通貨の社会実装の難しさと現状をGinco森川氏と語る「第二回Aerialミートアップ」イベントレポート【前編】

仮想通貨の社会実装の難しさと現状をGinco森川氏と語る「第二回Aerialミートアップ」イベントレポート【前編】

Aerial Partnersが定期開催している第二回Aerialミートアップを、2018年8月26日に開催しました。今回は、仮想通貨ウォレット「Ginco(ギンコ)」を提供する株式会社Ginco代表取締役である森川夢佑斗氏にご登壇いただき、Aerial Partners代表沼澤健人と、仮想通貨の社会実装についてトークセッションを行いました。

実際に仮想通貨領域のウォレットという分野においてスタートアップで活躍されている森川氏から見える、現在の日本の仮想通貨市場についてなど生の声をお話いただき、大変会場は盛り上がりました。当日のトークセッションのレポートです。

ブロックチェーンは非中央集権実現のためのイノベーション

沼澤

まずは、森川さんが仮想通貨/ブロックチェーンに興味を持たれたきっかけはなんだったんでしょうか?

 

森川氏

Ginco設立以前はIT系の会社で働いていたのですが、ふと、金融機関という存在に疑問を抱くことがあったんです。たとえば、メルカリのようなシェアリングサービスでも、お金のやりとりは金融機関を介し、手数料が発生してしまう。いわゆる中央集権的な仕組みに課題感を感じていたんです。

そんななか、仮想通貨/ブロックチェーンを知り衝撃を受けました。ブロックチェーンは、先ほどの中央集権的ではなく、非中央集権的な仕組みをつくれるテクノロジーなんです。これを基盤にしたのが仮想通貨で、お金のやり取りには金融機関が存在しない。つまり、これまで発生していた手数料も、ブロックチェーンを使えば圧倒的に安価に抑えられる。そこにイノベーションの大きな可能性を感じたのが、きっかけですね。

 

沼澤

今、日本円などの法定通貨で出来ているようなことは、いずれ仮想通貨で実現すると考えていますか?

 

森川氏

法定通貨が仮想通貨に置き換わる、というお話でしょうか? それはわかりません。

でも、インターネットを例にすると、その進展で誰でも情報を発信できるようになりましたよね。もともと、情報発信って、新聞社など、ひとつのの大きな機関の専売特許でした。それがいつの間にか、メディアから特定多数の個人へと、どんどん分散化されていった。さらに、インフルエンサーが好例ですが、価値の観点から見ると、マスメディアや出版社よりも個人が影響力を持つ時代になった。

これと同じようなことがブロックチェーンで起きるかもしれないと思っています。インターネットは、「情報の発信者の分散化」と「パワーバランスの変化」をもたらしたわけですが、「情報の発信と受信」という基盤を変えたわけではない。このように、法定通貨という基盤が仮想通貨に置き換わるということではなくて、新しいお金や新しい価値の誕生で、より利便性の高い社会がやってくるのではないかと考えています。

 

沼澤

全くアグリー(同意)ですね。よく、ブロックチェーンが話題に上るとき、中央集権や分散化、オールドエコノミーやトークンエコノミーのように二律背反だったり対比の文脈で語られることが多いんですが、私はその考え方に違和感を感じるんですね。それよりも、ブロックチェーンって、共存・両立を前提としたイノベーションだと思うんです。

あと、破壊的な技術だという方もいらっしゃると思いますが、私は新しい価値を生み出すものと捉えています。例えば、今日お越しいただいた皆さまに、僕たちの感謝の気持ちを伝えたいとする。このとき、ブロックチェーンを活用すれば、今まで見えにくかったそういった気持ちも経済的価値のある資産として表現できるのではないか、と。いわゆる、インタンジブルズ・エコノミーの実証です。これまでの生活は変わらないけれども、新たに価値として認知される領域が、ブロックチェーンにより誕生していくのではと考えています。

ここで、Gincoさんの事業についても詳しくお聞きしていきたいのですが・・・、まず「仮想通貨ウォレット」を事業ドメインにされたきっかけから教えてください。

めざすは、ブロックチェーンを「意識しないテクノロジー」にしていくこと

仮想通貨の社会実装の難しさと現状をGinco森川氏と語る「第二回Aerialミートアップ」イベントレポート【前編】

森川氏

きっかけは、最初にお話しした続きになります。ブロックチェーンを基盤にする非中央集権の経済圏は世界に広まっていくと確信したんです。それで、ウォレット・サービスを提供したいと考えました。たとえるなら、インターネットの黎明期のようなイメージでしょうか。インターネットが広まり、誰でも情報を気軽に発信できるような世の中になった。そして、それをよりスムーズにするため、メールアプリを提供する会社さんが出てきた。このように、環境整備の一翼を担いたいと考えたんです。

 

沼澤

なるほど。ウォレット・サービスならではの難しさはどのへんにありますか?

 

森川氏

いちばんは、ブロックチェーンという新しいテクノロジーを対象にしたサービスゆえ、デファクトスタンダードがないということですね。また、ブロックチェーン自体が絶えず進化している。このような状況のなかで、“安全な架け橋”として、仮想通貨とユーザーさんをどうつなぐかを試行錯誤しています。もう少し具体的に言えば、変化の早いテクノロジーをユーザーさんが使いやすいUI/UXで如何に表現するかですね。

 

沼澤

こう言うと、 “まわし者”のように思われてしまうかもしれませんが・・・(笑)、Gincoさんのウォレット・アプリのデザインって本当に素晴らしいんですよね。先ほどのお話されたことの具現化をめざしていると明確に伝わってくるんですよ。新しいテクノロジーのサービスとユーザーさんって、必ず摩擦が生じるものですよね。私の事業にしても、従来の会計制度では仮想通貨に対応できないことがたくさんある。そこで生じる摩擦を減らしていくことを当社もミッションにしていますが、Gincoさんの場合は、それをウォレットという形で取り組んでいる。「仮想通貨/ブロックチェーンの普及」を本気で考えているんだなと感じます。

 

森川氏

ありがとうございます。インターネットって、今や「インターネットを使っている」なんて、誰も意識しないですよね。まずそういった環境づくりに当社のサービスが寄与できればと考えています。これは、未来を見据えれば、ブロックチェーンの浸透による分散化社会の実現がテーマになるわけですが、まずは「社会実装に向けて」ということ。何事もそうですが、ステップを経て実現にたどり着くわけじゃないですか。その前段としてウォレット・サービスが適していると考えたんです。

 

後編では、森川氏が仮想通貨業界の1プレイヤーとしてみる日本の業界について話します。
この記事の後編を読む

 

仮想通貨の確定申告(税金)にお困りですか?

仮想通貨の取引で一定の利益が出た方は確定申告が必要です。申告をしないと申告漏れによるペナルティが課される可能性があります。株式会社Aerial Partners(エアリアル・パートナーズ)では、仮想通貨に精通した税理士による申告までの総合的なサポートサービス『Guardian(ガーディアン)』と、仮想通貨取引の損益計算システム『Gtax(ジータックス)』を提供しています。
仮想通貨の社会実装の難しさと現状をGinco森川氏と語る「第二回Aerialミートアップ」イベントレポート【前編】