仮想通貨関連法案の付帯決議 ICOの会計処理のあり方等を検討

2019年5月31日、仮想通貨関連法案として資金決済法及び金融商品取引法が参議院本会議で可決されました。

この改正では「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」に変更するほか、暗号資産に関する新たな規制の枠組みが定められています。

今回の改正に際し、衆参両院における財政金融委員会審議において、施行後の柔軟な対応を求める付帯決議がなされており、その中で挙がっている会計や税務に関係する部分について解説します。

付帯決議の意義

付帯決議(正式には「附帯決議」と書きます)とは、政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したものであり、それ自体には法的拘束力はないものの、政治的効力を持つものになります。

法律案の採決に付帯して決定されるので付帯決議と呼ばれています。法案が可決した後、法案が提出された委員会の委員長から許可を受けて議員が付帯決議の文章を朗読したのちに採決されます。

今回の仮想通貨関連法改正については、財政金融委員会にて審議され、付帯決議がなされました。

通常、法律が定めた大枠のルールについて、行政機関が定める施行規則などの行政法規で詳細なルールを定めることになります。法律は法律だけで完結することはなく、行政法規と一連のものとしてルールが定められるものであるといえるでしょう。

今回のケースでいえば、金融庁や国税庁などの関連行政機関は、行政法規を作成する際に付帯決議を尊重しなければなりません。

そのため付帯決議は今後の仮想通貨に関するルールに大きな影響を及ぼすことが想定されます。仮想通貨取引をする方には必見の内容といえるでしょう。

参議院のHPには

附帯決議とは、政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したものですが、実際には条文を修正するには至らなかったものの、これを附帯決議に盛り込むことにより、その後の運用に国会として注文を付けるといった態様のものもみられます。附帯決議には、政治的効果があるのみで、法的効力はありません。 こうして委員会で可決された法律案は、本会議に上程され同一会期に両院で可決されると、政府による公布手続を経て法律となります。
参議院のあらまし 委員会の活動(1)法律案の審査より引用)

とのように記載されています。

付帯決議での仮想通貨(暗号資産)の税務・会計

今回の付帯決議は全部で15項目の要望が含まれています。
以下では、税金や会計について論点としている付帯決議の項目をピックアップしてご紹介します。

全文はこちら
参議院
情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案に対する付帯決議

衆議院
情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

ICOの会計処理(本文7項目)

ICOの会計処理等は、発行されるトークンの性質に応じて異なるものと考えられるため、国際的な議論を勘案しつつ、会計処理等の考え方について整理のうえ、ガイドラインの策定等の必要な対策を講ずること

法人における会計処理等の取扱は、ASBJ(企業会計基準委員会)による「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」により定められていますが、その中にICOの取扱は含まれていない上、税務上の取り扱いも定まっておりません。

ICOの会計処理等は発行されるトークンの性質により取扱が変わることが想定され非常に複雑となっています。

ICOを一律に規定するのではなく、トークンの性質を加味して適切な会計処理等の取扱いを整理し、国際的な潮流も加味しながら今後ガイドラインや法律の整備に当たっていくという内容が書かれています。

仮想通貨(暗号資産)に対する課税のあり方(本文10項目)

暗号資産および電子記録移転権利の譲渡、暗号資産を用いたデリバティブ取引等に係る所得に対する所得税等の課税のあり方について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずること。

現在の税制では、仮想通貨(暗号資産)の取引で得た利益は雑所得扱いとなり、最大税率55%が課されていました。仮想通貨を用いたデリバティブ取引についても、同様の取扱とされていました。
また、電子記録移転権利(セキュリティートークン)に関する明確な定めはありませんでした。

そうした中で、今回の法改正における大きな論点は2つあります。

1. セキュリティトークンの扱い

電子記録移転権利の譲渡(セキュリティトークン)と暗号資産とは明確に区別され、定義が定められました。暗号資産は資金決済法セキュリティトークンは金商法の枠組みに則り管理されることになります。
これにより、セキュリティートークンが証券と同様に申告分離課税の取扱となるかどうかが論点になっています。

2. 仮想通貨(暗号資産)を用いたデリバティブ取引の扱い

従来、暗号資産を用いたデリバティブ取引は現物取引同様に雑所得扱いとなり、最大税率55%になっていました。改正法では、申告分離課税として20%の税率となる金商法上のデリバティブ取引に該当するかどうかが論点になっています。

また、デリバティブ取引が申告分離課税となり20%の税率となった場合、暗号資産の現物取引も同じ税率にするべきであるという意見や、そもそも暗号資産取引は雑所得ではなく譲渡所得扱いが妥当との意見などが出ており、まだ決着を見ていないというのが現状です。

こうした論点について、付帯決議の趣旨を鑑みて、所得税等の課税のあり方についての検討を加えていくことになります。

仮想通貨(暗号資産)業界の発展のための規制配慮(本文13項目)

8から12までの各項の検討および措置を行うに際しては、暗号資産および電子記録移転権利ならびに、それらの基礎となる技術が我が国の産業の高度化に資する可能性があることを踏まえ、法規制やこれらの技術の開発および応用を過度に制限することがないように配慮すること。

こちらの項目では、次々と新しい技術が発表されているブロックチェーン業界において、過度な規制によって産業の芽が育たないという事態を避けるために、過度な規制を避けるように配慮することを求めています。

法律だけですべてのルールが定まるものではなく、法律可決後に各省庁が定める施行規則等において、運用レベルのルールが作られていくことになります。

こうした実際の運用において、過度に新しい技術を取り締まることなく、健全に技術発展をさせていこうという意思表明になっています。

以上のように、政府に対して柔軟な対応を求める付帯決議がなされています。

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