仮想通貨(暗号資産)による政治献金の税務上の取扱い

総務省が、仮想通貨(暗号資産)による政治家個人への献金は違法にならないという見解を示したことが各方面のメディアで話題になっています。

この場合、政治家個人・政治団体の納税義務や、寄付を行った個人が寄付金控除を受けることができるかなど、税務上の取り扱いについていくつかの論点が生まれています。

そこで、今回は仮想通貨税務に精通している税理士が、これらの税務上の取り扱いについて考察しました。

この記事のまとめ

前提として

  • 政治家個人に対して「金銭等」の寄付はできない
  • →政治団体に対する寄付は許される

  • 個人が政治団体に対して寄付をした場合、寄付金控除を受けることができる場合がある
仮想通貨による政治家個人・政治団体への献金について

  • 政党などの政治団体が寄附を受けた仮想通貨については法人税が課されない可能性がある
  • 仮想通貨は政治資金規正法上の「金銭等」に該当しないため、政治家個人に仮想通貨を寄付することは違法ではない
  • 仮想通貨による献金を受けた政治家個人は、原則として雑所得として申告する必要が生じるが、選挙管理委員会に収支報告する限りで非課税になる可能性がある
  • 仮想通貨による献金した場合、寄付金控除を受けられる可能性がある

①仮想通貨による政治家個人への献金が合法と判断された!?


仮想通貨に詳しい政治団体トークントークンを設立した岡部典孝氏のツイートをきっかけにして行われた記者会見において、高市総務相が、仮想通貨(暗号資産)は政治資金規正法上の「金銭等」に該当しないと回答したことをロイター通信が報じ、話題を呼んでいます。

つまり、仮想通貨を献金することについて、政治資金規正法上の規制はなく、政治団体に寄付することに限らず、政治家個人に仮想通貨を寄付することも違法ではない、ということになります。では、政治家・政治団体が献金として仮想通貨を受け取った場合、納税義務は生じるのでしょうか?

②政治献金とは?

メディアで「政治献金」と呼ばれるものは、政治資金規正法の定める手続きに基づいて、有権者から、政党や、政治家個人が設ける資金管理のための団体などの「政治団体」に対して行われる寄付のことを指しています。

政治資金規制法21条の2第1項、同法施行令2条により、「公職の候補者」の政治活動に関し、「金銭等」、すなわち金銭または有価証券による寄付をしてはならないとされ、「政治団体」に対する寄付は許されると規定されています。

③仮想通貨により献金を受け取った政治家・政治団体に納税義務はあるのか?

(1)政治団体について

個人の有権者が、政治団体に対し、献金として仮想通貨を寄付した場合には、政治団体にはどのような納税義務が生じるのでしょうか?

この点について、国税庁からの公式見解は公表されていませんが、東京都選挙管理委員会の公表資料が参考となります。

政治団体のうち、一般的な政党は、法人税法の適用との関係では「公益法人等」とみなされます(政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律13条1項前段)。したがって、定期的に開催される政治パーティーなどの収益事業から生じた所得とみなされない限り、政党が寄付を受けた仮想通貨については法人税が課されない可能性があります(法人税法7条)。

また、政治家の資金管理を行う政治団体は「人格のない社団」と考えられており、政党と同様に法人税法7条が適用されます。したがって、このような政治団体も、収益事業から生じた所得とみなされない限り、政党が寄附を受けた仮想通貨については法人税が課されないと考えられます

(2)政治家個人について

個人の有権者が、政治家個人に対し、献金として仮想通貨を寄付した場合、政治家にはどのような納税義務が生じるのでしょうか?

この点についても、国税庁からの公式見解は公表されていませんが、いくつかの地方公共団体の選挙管理委員会の見解が参考となります。

たとえば東京都や福島県では、政治献金を雑所得として申告する必要がある、と示しています。また、東京地裁の平成8年3月29日判決でも、国会議員の受けた政治献金が雑所得となると示されています。

よって、個人の有権者から仮想通貨による献金を受け取った政治家は、一般の仮想通貨投資家と同様に雑所得として申告する必要が生じるものと考えられます。個人の仮想通貨にかかる税金についてはこちらの記事にまとめておりますのでご参照ください。

▽仮想通貨にかかる税金の概要はこちら▽

【2020年対応】仮想通貨(暗号資産)の税金の基本|税理士がわかりやすく解説!

2019.07.26

他方で、所得税法9条1項18号によれば、選挙管理委員会に対する選挙運動に関する収支報告(公職選挙法189条)がなされている献金であれば、非課税となるとも定められています。

これらを併せて考えると、個人の有権者から仮想通貨による献金を受けた政治家は、原則として雑所得として申告する必要が生じますが、選挙管理委員会に収支報告する限りで非課税になる可能性があります。

④寄付をした個人に寄付金控除が適用されるのか?

上記とは反対に、仮想通貨による寄付を行った個人の有権者は、政治活動に関する寄付金控除による優遇措置を受けられるのでしょうか?

政治活動に関する寄付金控除(租税特別措置法41条の18)とは、Ⓐ政治資金規正法4条4項所定の「政治活動に関する寄附」で、政党等の政治団体に対してなされ、同法に従って選挙管理委員会等へ報告がなされたものか、Ⓑ公職の候補者の選挙運動に関してされた寄附で、公職選挙法189条による選挙管理委員会へ報告がなされたものであれば、「特定寄附金」(所得税法78条2項)とみなされ、一定額が課税所得から控除される、という規定です。

Ⓐ政治団体に対する寄附について

まず、政治団体に対する仮想通貨による献金がⒶの「政治活動に関する寄附」に当たるかが問題となります。租税特別措置法41条の18第1項によれば、「政治資金規正法4条4項に規定する政治活動に関する寄附」のうち、「同法の規定に違反することとなるもの」が除外されています。そして、同法4条3項・4項によると、「政治活動に関する寄附」とは、政治団体に対してされる寄附又は公職の候補者の政治活動に関してされる、金品、物品、その他の財産上の利益の供与又は交付、とされています。

ここで、岡部氏のツイートのリンク先のファイルをみると、総務省としては、一般的に仮想通貨が「財産上の利益」に該当すると考えていることが分かります。そして、②でみたとおり、政治家・政治団体に対する仮想通貨の献金は違法ではありません。よって、政治団体に対する仮想通貨による献金は「政治活動に関する寄附」に該当しうるため、受領した政治家・政治団体が選挙管理委員会等に報告を行っている限り、個人の有権者は寄付金控除を受けられる可能性があります。

Ⓑ政治家に対する寄附について

政治家に対する仮想通貨による献金が②の定義をみたしうることに問題はありません。また、③でみたとおり、政治家は献金を受けた仮想通貨を非課税処理とするために、公職選挙法にしたがって収支報告を行うと考えられます。

したがって、政治家に対する仮想通貨による献金についても、個人の有権者は寄付金控除を受けられると考えられます。

寄付金控除を受ける際の所得控除額は以下のいずれかの低い方の金額になります。

  • 寄付金額の合計額ー2,000円
  • (総所得金額+退職所得+山林所得の40%)ー2,000円

まとめ

仮想通貨により政治家・政治団体に寄付を行うことについて、現在のところ、政治資金規正法の問題がないことが総務省により明らかにされました。

これを前提にすると、仮想通貨による献金を受け取った政治家・政治団体では非課税処理が可能であり、献金を行った個人の有権者も寄付金控除を受けられる可能性がある、という処理になると考えられます。

しかし、高市総務相は新たな規制を模索することを示唆しており、それに伴って、税務上の処理も変更される可能性が高いといえます。今後の動向に注意が必要です。

著者:藤村 大生 公認会計士・税理士 株式会社Aerial partners 事業部長
 
監査法人でデューデリジェンス、原価計算導入コンサルなどの業務を中心に従事。また、証券会社の監査チームの主査として、分別管理に関する検証業務も行う。暗号資産事業者に対する経理支援を行っており、暗号資産会計・税務の知見に明るい。

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