仮想通貨(暗号資産)の損失は相殺できる?確定申告は必要?赤字になったらできる税金対策

仮想通貨取引による所得には税金がかかり、確定申告が必要になりますが、損失が出た場合はどうなのでしょうか?今回は仮想通貨取引で損失が出た場合の税金や知っておくべき事、損失時にできる税金対策を紹介します。
監修税理士

仮想通貨取引で損失が出ている場合の確定申告は必要か

そもそも仮想通貨取引で損失が出ている場合、確定申告は必要なのでしょうか。仮想通貨にまつわる税金や確定申告の基本からお伝えします。

仮想通貨取引で損失が出ているなら、確定申告は「不要」

結論から言うと、年末時点で仮想通貨取引において損失が出ている場合、また仮想通貨取引で得た利益から各経費を引いた「所得」が20万円以下の場合は、仮想通貨取引においては確定申告は原則必要ありません。ただし他の所得がある場合や医療費控除などを受ける場合は、確定申告が必要になります。その際に注意しておきたいのは、仮想通貨の利益が20万円以下であっても、雑所得の欄にその所得額を記載する必要があること。もし損失を出している場合は、記載する必要はありません。

※他の雑所得がある場合には確定申告自体は必要になる可能性があるのでご留意ください。その際には、雑所得内であれば仮想通貨により発生した損失を相殺させることができます。
特に、2018年のようにビットコイン価格が下落傾向にあった市場環境では、損失がでている方が多くなりますが、損失が出ているときの税金対策についてはあまり知られていません。

仮想通貨による所得にかかる税金

個人での仮想通貨取引による所得は雑所得に分類されます。
雑所得は次のような特徴を持っています。

  • 総合課税の対象で、給与所得等の他の所得と合計した金額に応じて税率が変化
  • 所得額が大きくなるほど税率が高くなる累進課税
  • 仮想通貨取引によって生じた損失分を給与所得等の他の所得区分の所得から差し引くことはできない
  • 損失を翌年に繰り越すことができない

仮想通貨取引で損失が出ている場合に知っておくべきこと

翌年度以降の税額を相対的に低くするためにできることなど、損失が出ている場合においても知っておいたほうが良いことがいくつかあります。

昨年度総平均法を採用した人は要注意

まず初めに、市場の動向などから体感的に損失が出ているだろうという判断をせず、必ず正確な損益計算を行いましょう。体感では利益が出ていないと思った場合でも、採用する計算方法によって所得額が大きく異なることがあります。仮想通貨取引の所得計算には移動平均法または総平均法が用いられます。
移動平均法は計算が複雑ですが、比較的体感に近い所得金額になるのに対して、総平均法は計算が簡単ですが、仮想通貨の市場の動きによっては体感と大きく乖離した所得金額になることがあります。

国税庁は移動平均法を選択することを原則としていますが、継続して適用することを条件に総平均法の利用が認められています。

上で述べたように総平均法での計算結果は体感の所得額と異なる事があるので注意が必要です。体感では判断せず、必ず正確な所得額を把握してください。

仮想通貨の確定申告で利用される「移動平均法」「総平均法」の違いとは?

他の雑所得がある場合は雑所得内で相殺できる

仮想通貨の取引により発生する所得は原則として雑所得となります。アフィリエイト報酬など、他に雑所得に該当する所得がある場合は雑所得内であれば仮想通貨取引での損失分で相殺可能です。よって損失が出ていたとしても正確な損失額を把握して確定申告に望むことが重要となります。

適切な処理をすれば翌年度以降の税額を相対的に低く抑えることが可能

仮想通貨の取引により発生する所得(雑所得)の損失は翌年に繰り越すことができません。損失としてマイナスとなっている分、当年度の所得が減るわけではないので、当年度に多くの損失を出しておくよりは、先に利確をして翌年度以降に発生する可能性のある所得を抑える対策を行うことが望ましいです。そのために、仮想通貨取引により損失が発生した場合で、かつ、含み益がある通貨を保有している場合は利益を確定させて実現損益をできるだけ0に近づけておくことが税金対策につながります

方法としては、含み益のある通貨を売却して、利益を実現させ損失を相殺するという処理をします。通算の損益が変わることは基本的にはありませんが、損失は翌年に繰り越せないので、なるべく損益を0円に近づけるようにすることで無駄な損失をなくすようにします。

注意点:移動平均法の場合は売った通貨をそのまま買い戻しても損益に影響しませんが、総平均法では同年度内の買い戻しによって1年間での取得原価が変化するため、意図した結果とは相違してくる可能性があります。こうした点は移動平均法を選択する利点と言えるでしょう。

*1 含み益 :通貨は値上がりしていているが売却せず未だ確定していない利益のこと
*2 取得原価:仮想通貨を取得するときに支払った金額(手数料等含む)

処理の具体例

2019年に20万円の(実現)損失があるとして、同時に年末に20万円の含み益があるとします。

年内に利益確定の処理をせず年越し後に同じ価格で売却した場合

課税される損益
2019年:0円(20万円の損失があるので)
2020年:20万円(20万円分含み益を実現したので)通算の損益
マイナス20万円(2019年) + 20万円(2020年) = 0円

年内に利益確定の処理をした場合

課税される損益
2019年:0円(含み益が実現されて損失と相殺)
2020年:0円(取引なし)通算の損益
0円(2019年) + 0円(2020年) = 0円

このように含み益を確定させることで、通算の損益が同じだとしても、課税される損益に差が出てきます。

損失が出ているときでも正確な損益額を把握することが大切

価格変動の大きい仮想通貨への投資では損失発生リスクは避けられません。しかし、上で紹介したように損失が出ている時にも確定申告や税金対策のためにやるべきことはいくつかあります。そのためには、まずご自身が行った取引からいくら損益が出ているか、現状保有している通貨の価値はいくらなのかを適時・適切に把握することが大切です。

なお仮想通貨の利益が年をまたぐ場合、平均取得単価は翌年に引き継がれます。こうした細かな点も把握しておくといいでしょう。

仮想通貨の税金の基本については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

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